略式請求(略式手続)の適用犯罪は、問題となっている犯罪の法定刑(法律で定められた刑罰)に罰金刑のように、 財産刑(一定の範囲の財産を剥奪する刑罰)が含まれる犯罪で、当該犯罪について財産刑のみを適用することが妥当と検察官が 判断した場合、適用されることになります。

したがって、
痴漢(東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条1項、8条 法定刑:6月以下 の懲役又は50万円以下の罰金)、
暴行(暴行罪 刑法208条 法定刑:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 傷害罪等)、
傷害(刑法204条 法定刑:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、
交通事故(業務上過失致死傷罪等 刑法211条2項:法定刑 7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金)
等で、検察官が罰金刑等の財産刑のみの刑罰とすることが妥当と考える場合、略式請求(手続)が使われることになります。

平成18年までは、窃盗罪の法定刑に罰金はありませんでしたが、平成18年(2006年)5月28日から、罰金刑が加えら れました。

もともと、明治時代に刑法が制定された際には、窃盗は、お金に困った人が起こす犯罪であり、金銭を払うことを刑罰 (罰金)として定めても意味がないと考えられ、罰金刑はつけられませんでした。
しかし、近年は、お金があるにもかかわらず万引きなどの窃盗行為を犯す者が増えたことから、このような改正が行われ ました。

つまり、法定刑に懲役しかなく、罰金が定められていないと罰金刑を対象とする略式請求(略式手続)は、使うことが できません。
そのため、万引き等の処罰としては、いきなり、公訴を提起し、懲役刑を求めることになりますが、バランス上なかなか 困難という感覚があり、実質、万引き等に対する適切な処罰がされなかったという反省から、このような改正が行われた のです。

したがって、現在は、窃盗罪についても、万引き等については、略式請求(略式手続)が使われる余地があります。

ただし、当然のことながら、罰金刑の定めのない、たとえば痴漢の際に適用されることがある強制わいせつ罪 (刑法176条 法定刑 6月以上10年以下の懲役)の場合は適用されませんし、例え、罰金刑のある犯罪であっても、 検事が罰金刑のみとすることを妥当と考えない場合、略式請求(略式手続)は適用されません。

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