児童買春等に適用される法律には、下記のような法律が考えられます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は、平成11年5月18日成立し同月26日公布され同年11月1日に施行されました。

この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的としています(第1条)。

法律により処罰される「児童買春」(第2条)とは

法律により処罰される「児童買春」(第2条)とは、
(1)児童(第2条第2項第1号)、
(2)児童に対する性行為の周旋をした者(前項第2号)、
(3)児童の保護者又は児童をその支配下に置いている者(前項第3号)
に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童(子供)に対し、性交(せいこう=セックス)等(性交若しくは性交類似行為をし、 又は自己の性的好奇心を満たす目的で、 児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触り、 若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。)をすることをいいます。

この法律の「児童」とは、性別を問わない18歳未満の人のことです。

「対償」とは、児童に対して性行為等を行うことに対して、金銭等の経済的利益を与えることをいいます。

現金、物品、有価証券だけでなく、金銭の貸し付け、返済の猶予、債務の免除もこれに含まれるとされています。

また、「供与し、又は、その供与の約束」は、性行等が行われる前に存在することが必要です。

この罪に対する処罰は、
1.児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する(第4条)。
2.児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、 又はこれを併科する(第5条第1項)。 児童買春の周旋をすることを業とした者は、 7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する(第5条2項)。
3.児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(第6条1項)。 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、 7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する(第6条2項)。
となっています。

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児童福祉法

児童福祉法は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、 育成されるよう努めなければならない(第1条1項)。」とし、「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」(前条2項)とした上で、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、 児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と規定しています(第2条)。

その上で、34条1項に「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。」として、 その 6号に「児童に淫行(いんこう)をさせる行為」を禁止行為として定め、 これに違反した場合、「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(60条1項)として重い処罰を定めています。

このように重い刑が定められているのは、児童にその福祉上有害な行為をさせる場合のなかでも、性行為をさせることは、特に悪いことと考えられているからです。

児童とは、「満18歳に満たない者」ですが(6条)、仮にその児童の年齢を知らなかった場合であっても、「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、 前三項の規定による処罰を免れることができない。

ただし、過失のないときは、この限りでない」(60条4項)とされています。

「児童を使用する者」とは、 その児童との間に継続的な雇用関係や身分関係がある者だけではなく、通常、その児童の年齢を確認すべきであると考えられる継続的な 支配従属の関係がある者のこととされています。

そして、禁じられた行為である「淫行」とは、 性交渉だけではなく、手淫・口淫などの純粋なセックスではないが、一般的にこれと類似とされている行為も含まれると考えられています。

淫行を「させる」行為とは、児童に働きかけて淫行をするように仕向ける行為であり、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を 及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為を包含する」 (最高裁昭和40年4月30日決定 最高裁判所裁判集刑事155号595頁)とされています。

このように、この法律がもともと処罰を予定しているのは、 児童に対し、性交渉をさせるように仕向けた者ですが、児童の相手方になった者についても、この罪を認めた最高裁の判決(最高裁判所平成10年11月2日決定  刑集52巻8号505頁 判時1663号149頁)もあります。

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青少年保護育成条例違反事件

青少年保護育成条例は、各都道府県で定められた条例です。

東京は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」になりますが、 警察庁は、統一して青少年保護育成条例違反の名称を用いているようです。

例えば、東京都青少年の健全な育成に関する条例は、その18条の6(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)において、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない」として、これに違反した場合「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の刑を定めています。

この条例における青少年は、「18歳未満の者」(2条1項)です。

強制わいせつ罪

刑法176条は、「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。

13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」とし、その後段において、13歳未満の男女に対して、わいせつな行為を行った者は、暴行又は脅迫を用いなくても、6月以上10年以下の懲役とすることを定めています。

この法律で「わいせつ」とは、いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為をいうものとされており、性交等はもとより、陰部への接触行為、乳房への接触行為、接吻行為等も含まれるとされています。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律、児童福祉法、青少年保護育成条例との関係については、以下のとおりになると考えられます。

18歳未満の児童に対して暴行・脅迫によってわいせつ行為をすることが同時に、児童に淫行をさせることに当たる場合は、強制わいせつ罪と児童福祉法に定める児童に淫行をさせる罪(同法34条1項6号)とが 成立する場合があります。

この場合は両罪における保護しようとする利益が異なることから両方の罪が成立すると考えられます。

13歳未満の者に対し、対象(利益)を供与してわいせつ行為を行った場合、強制わいせつ罪に該当するとともに、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条にも該当することが考えられます。

この場合、強制わいせつ罪が児童買春罪と趣旨・目的を異なるものとして、両罪が成立するという立場もあり得ますが、強制わいせつ罪のみで評価が尽くされているとすると、 強制わいせつ罪のみが成立するということも考えられます。

ただ、具体的な適用については、裁判官によっても異なると考えられます。

青少年保護育成条例と強制わいせつ罪とが双方成立しうる場合は、青少年保護育成条例における青少年とみだらな性交等を行う罪は 強制わいせつ罪に吸収され別罪を構成しないと考えられます。

ただ、強制わいせつ罪は、親告罪(刑法180条1項)のため、「二人以上の者が現場において共同で犯した」場合(刑法180条2項)、致死傷の結果が生じた場合(181条)を除いては、告訴権者による告訴が必要になります。

13歳未満の場合は、親権者も告訴権を持つことになります。

この点は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律、児童福祉法、青少年保護育成条例と異なります。

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強姦罪

刑法177条は、「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫(かんいん)した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。

13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」として、その後段において、13歳未満の男女に対して、姦淫(かんいん)を行った者は、暴行又は脅迫を用いなくても、3年以上の有期懲役とすることを定めています。

この法律に「姦淫」とあるのは、性交のことです。

強制わいせつ行為と強姦行為が同時に行われた場合は、両行為を強姦罪1罪で評価されると考えられます。

強姦罪は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する 法律4条及び児童福祉法と趣旨・目的を異にするものと一般には考えられています。

そこで、これらの罪が同時に問題となる多くの場合、両罪はともに成立すると考えられます。

ただ、具体的な適用については、裁判官によっても異なると考えられます。

また、強姦罪も、親告罪(刑法180条1項)のため、 「二人以上の者が現場において共同で犯した」場合(刑法180条2項)、 致死傷の結果が生じた場合(181条)を除いては、告訴権者による告訴が必要になります。

13歳未満の場合は、親権者も告訴権を持つことになります。

この点は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律、 児童福祉法、青少年保護育成条例と異なります。

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