盗撮行為等を処罰する新法の施行」で「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます。)が制定され、令和5年7月13日から施行されたことを記事にしました。

早速、令和5年9月に生じた性的姿態撮影等処罰法の事件を受任し、解決しました。

行為態様は、店舗の中で女性のスカートの中をスマホで下から撮影しようとしたという従来であれば、迷惑防止条例の対象となるものでした。むろん、正当な理由がないのに、ひそかに、「性的姿態等」を撮影(1条1号)していますので、性的姿態撮影等処罰法の構成要件を満たしています。

今回の事件は、示談により不起訴となりましたので、裁判になったらどうなっていたか等はわかりません。また、示談金の金額も、今回の件では、従前の迷惑防止条例の場合と大きく違いはありませんでしたが、この1例だけでは、確定的なことがいえる状況ではありません。

もともと、条例は、「法律の範囲内で」地方自治体に制定権が認められているものです(憲法94条)。しかし、判例(徳島市公安条例事件:最大判昭和50年9月10日刑集29巻)は、「①国の法令の規制の趣旨が全国一律の均一的な規制をめざしていると解される場合には、条例によって、法令が規律の対象としていない事項を法令と同一の目的で規制したり、法令が規律の対象としている事項をより厳しく規制したりすることは、許されないが、②法令が全国的な規制を最低基準として定めていると解される場合には、ともに許される旨」と判示しています(芦部信喜・高橋和之「憲法 第六版」(Kindleの位置No.7468-7473)。

このように、「法律の範囲内で」とされながら、条例の制定範囲は、かなり広範なものであり、近時は、特に、暴力団排除条例のように法律では規定しづらい範囲を率先して規制する条例や、相手方の承諾なくGPS機器等に関わる位置情報を取得する行為等について、ストーカー規制法の規制範囲外の行為を規制する条例(「東京都の迷惑防止条例の改正(相手方の承諾なくGPS機器等に関わる位置情報を取得する行為外)」の記事に記載しました。)なども、あります。

性的姿態撮影等処罰法と従前の迷惑防止条例との関係がどのようになるかについては、①通常形態の初犯の盗撮の場合であっても、性的姿態撮影等処罰法の刑罰が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金であるのに対し、例えば東京都のいわゆる迷惑防止条例の刑罰は6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金とかなり軽いこと、②性的姿態撮影等処罰法の処罰範囲が迷惑防止条例の処罰範囲を含んでいるように解釈できることから、今後、盗撮については、基本的には、性的姿態撮影等処罰法のみが適用されるのではないかとも思えますが、むろん、まだ、施行されたばかりの法律ですから、今後の運用、解釈論の推移、裁判例等を見ていく必要があります。

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