いままで、このHPでは、特に断りなく、被疑者や被告人という用語を使用してきましたが、この記事では、簡単にこれらの用語について、説明します。
被疑者とは、犯罪の嫌疑を受け、捜査機関により捜査の対象とされているが、まだ、公訴(検察官が刑事事件について裁判所の裁判を求める申立を行うこと)を提起されていない者のことです。
これに対し、被告人とは、犯罪の嫌疑を受け、公訴を提起され、その裁判が確定していない者のことです。
両者は、犯罪の嫌疑を受けている者であること、受けた嫌疑の裁判確定前であることは同じです。
そのため両者とも、嫌疑を受けた犯罪については、無罪の推定が働くことになります。
両者の差異は、被疑者が公訴提起前であるのに対し、被告人は、既に公訴を提起されている者ということで、現在、その者がいる刑事訴訟手続における手続の時点が異なっていることから生じます。
被疑者・被告人だからといって、逮捕・勾留されるのは、逃亡のおそれがあること等の勾留の理由等がある場合に限られます。
しかし、逮捕・勾留された場合、被告人については、保釈(保証金を納付させて被告人を釈放する制度)があるが、被疑者には保釈の制度がないことが異なります。
被告人と似た言葉として、民事訴訟等における被告があります。
被告とは、民事訴訟または行政事件訴訟において、訴えを提起された側の当事者のことで、被告に対峙する民事訴訟等の訴えを提起した者のことは、原告といいます。
当然、被告人と被告は、意味の点では全く異なります。
しかし、新聞、テレビ等のメディアが、被告人を被告と呼称するため、この二つを混同されている方もいらっしゃいます。
そのため、訴訟を提起されたと相談に来る方が、私は犯罪者ではないと怒っておられるということもあります。
なぜ、メディアにおいて、このような誤用が生じたままなのかについては、理由はわかりません。
1字でも字数を減らしたい新聞等において被告人を被告と使用するようになったということが言われることもありますが、この説も根拠はわかりません。