東京都の迷惑防止条例(正式名称:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)が改正され、令和4(2022)年10月1日から施行(しこう:法律の効果が生じること)されました。

改正内容は、①「つきまとい行為等の禁止」に係わる規制対象行為の拡大(第5条の2第1項)、②「つきまとい行為等に係わる情報提供の禁止」の新設(第5条の3)です。

これは、いわゆるストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)が令和3(2021)年5月改正、同年6月15日に施行されたことを受けての改正です。

今回は、この東京都の迷惑防止条例の改正の内容についてご説明します。また、今後、ストーカー規制法の改正の内容、及び、このストーカー規制法と迷惑防止条例の相互関係の記事を作成していきたいと思います。

①「つきまとい行為等の禁止」に係わる規制対象行為の拡大(第5条の2第1項)の具体的内容は、

「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。」(第5条の2第1項1号)

と、従前から規定されていますが、この「住居等」に、「身体の安全、住居等(住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所又は通常所在する場所をいう。)」(第5条の2第1項柱書)として、「現に所在する場所」も含まれるようにしたことです。

これにより、従前、規制対象でなかった相手方が「現に所在する場所」の付近での見張り、例えば、子供のサッカーの試合を観戦するために訪れていた学校のグラウンドや、客として訪れていた店舗、 出演していた演奏会場での見張りも規制対象となりました。

また、「連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。」(第5条の2第1項4号)と、「文書の送付」が追加され、「相手方から拒まれたにもかかわらず、毎日一度、相手方へ手紙(封書やはがき)を郵送する行為」等が規制対象となることになりました。

どちらの場合も違反した場合の罰則は、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

②「つきまとい行為等に係わる情報提供の禁止」の新設(第5条の3)の具体的な内容は、

「何人も、前条第一項の規定に違反する行為(以下この条において「つきまとい行為等」という。)をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対し、当該つきまとい行為等の相手方の氏名、住所その他の当該つきまとい行為等の相手方に係る情報でつきまとい行為等をするために必要となるものを提供してはならない。」(第5条の3)

と新たに規定したことです。

これは、ストーカー規制法の前記の改正により、その第6条に

何人も、ストーカー行為又は第三条の規定に違反する行為(以下「ストーカー行為等」という。)をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対し、当該ストーカー行為等の相手方の氏名、住所その他の当該ストーカー行為等の相手方に係る情報でストーカー行為等をするために必要となるものを提供してはならない。

と規定されたことを受けて、つきまとい行為についても同様の規定を設けたものです。

この規定により、Ⅰ 「相手方の承諾なく、その所持するGPS機器等に係る位置情報を取得する行為」、すなわち、相手方のスマートフォンを一時的に操作して、当該スマートフォンの画面上に位置情報を表示させて盗み見る行為、相手方の自動車に取り付けられたGPS機器等(位置情報が記録されたもの)を回収する行為、相手方の所持するGPS機器等により送信された当該機器等に係る位置情報の電磁的記録を、行為者が所持するスマートフォンで受信する行為が規制対象となります。

また、Ⅱ 「相手方の承諾なく、その所持する物にGPS機器等を取り付ける等の行為」、すなわち、相手方が使用・乗車する自動車の底部にGPS機器等を取り付ける行為、GPS機器等を取り付けたプレゼントを相手方に交付する行為、相手方のカバンのポケットにGPS機器等を差し入れる行為等も規制対象となります。

ただし、この迷惑防止条例の第5条の3は、ストーカー規制法の6条と同様、罰則の定めはありません。

今回の迷惑防止条例の改正及びストーカー規制法の改正は、近時、いままでの規定では、規制対象でなかった相手の所持するGPSの位置情報を取得したり、相手方の所有物にGPS機器をつけることにより、位置情報を把握し、相手方が現にいる場所につきまとい等を行う事例が増大したことによります。

このような現状等については、ストーカー規制法の改正の記事において、また記載したいと思います。

刑事事件お問い合わせ
刑事事件お問い合わせ
※無料相談が可能な方は「東京都内の警察に逮捕された方またはその家族の方」となります。